

その料理はご自分のものになっているのですから
後はどうでもお好きなように。
「お客さまのご自由に」「お客さまのお好きなように」と
田中康夫が各ジャンルの名店に訪れて
食事の作法についていろいろ訊くのだけれど、ほぼこんなカンジ。
して欲しくないことはただ一つ。
隣のお客さんに迷惑をかけないでくださいということだけなんです。
どんなに美味しくても
接客やお客の質で行きたくなくなる店が多い中
名店らしい当たり前のお答え。

2008年刊行予定(!)の次作もまだなので
この2004年の「愚か者死すべし」が未だに最新刊。
前作から9年経っての第2期の1作目。その前は5年。
沢崎本人は両切りのピースに中古のブルーバード、
伝言は電話応答サービスというのはあいかわらずだけれど
「公衆電話というのは近頃では犯罪者の専用回線か」
「いまどき、携帯電話も使えずに、探偵がつとまるのか」
といった台詞どおり舞台が大きく変わってしまっている。
矢作俊彦の「ロング・グッドバイ」でも
あの二村永爾が携帯電話を持ち歩くはめになった。
ハードボイルドな生き方と
携帯電話との折り合いの付け方について。

やはりその多くが小学館のもの。
「小学五年生」「小学六年生」といった学習誌の休刊を決めた小学館。
むかしその学習誌を愛読していて
いまはアナログ盤を紙ジャケCDへと移行しているような
そんな人たちにむけた作品愛の新編集か。
ずっと窓際族あつかいされていた定年間際のかつての編集王たちが
若いものを押しのけてまたギラギラと切り盛りしている現場から
なんてのはやはり妄想しすぎ。

アラン・ドロン演じる青年トムの闇。
久しぶりに「太陽がいっぱい」を観直してみて
あらすじが記憶とずいぶん違っているのは
原作に忠実なリメイク版「リプリー」と混同しているせいだろう。
ニノ・ロータのテーマ曲が流れると
クレモンティーヌの語りが聞こえてくるのは
井出さんのアルバム「パープル・ヌーン」のせい。
殺人のあと主人公が
魚市場をひとりで歩くシーンの104秒間を
自分の人生に重ねられない人は、
救いがたいほど不幸であるか
あるいは滑稽なほど幸福な人ではないだろうか。
これは昨日眠る前に読んだ
原尞のエッセイ集「ミステリオーソ」から。

依頼人の「原稿はすぐに送ります」という言葉を鵜呑みに出来るわけなく
関川夏央の「中年シングル生活」を読み始める。
長編小説ではなくエッセイ集を選ぶところがいじらしい。
「あなたはオトナになるまで再婚なんかしちゃ駄目よ」
「どれくらい駄目だろう」
「懲役18年よ」
なんて彼女の最後の台詞から始まる
エッセイであり書評でもあり
ハードボイルド小説であったりする。
ハードボイルド小説とは暴力小説ではない。
たんにモダニズム趣味の吐露でもない。
それは大都会で原子のように浮遊する人間たち
とりわけ家庭という安住の場所からこぼれた独身者たちが
ひそかに友を探す物語だということができる。
男は女の人が考えている以上にロマンティストで
考えている以上に面倒くさい。

いつものように昔のアニメ話。
そんな酔っていないはずなのに
どうも話が少しズレるなあと思っていたら
「もしかしてオマエ、金田伊功が今年の夏に亡くなったこと知らないのか」
と言われ「ええええ」と椅子からひっくり返りそうになる。
金田伊功という天才アニメーター。
動画枚数が抑えられた70年代のロボットアニメで
金田パース、金田ビーム、金田飛びと呼ばれた
独特の作画による戦闘シーンはまさに革命だった。
テレヴィ放送が一期一会だったあの時代
金田作画詰め合わせの「銀河疾風ブライガー」のオープニングに
ブラウン管の前で釘付けになった少年たち。
コクピットに乗る主人公以上にカッコイイ原画マンというヒーロゥの登場は
アニメの見方をずいぶん変えてしまった。
今日は晩酌しながらどのアニメを観直そうか迷ったけれど
結局、アニメーター役の手塚理美に金田伊功リスペクトをかさねた
「茶の味」をゆっくり観ることにする。
我修院達也が金田伊功か。
マンガやアニメを支えてきた人たちの短命があまりにも多すぎる。

青春のブラック・ボックス(段ボール)から抜き取った
浜田省吾のヴィデオテープを真夜中に再生してみる。
満ち足りないままでも少年の心は日々失われていく。
最近の自分に欠けているのはこういう感覚なんだな
とか思いながらの大合唱。
とりあえずカラオケに行きたいという考えがすでにダメだ。

写真は芸術で、撮影は猥褻。
そもそも都市の風景にヌードを置くというのは
1990年の「TOKYO NUDE」から続いているもの。
発表時のインタヴューで「この撮影は全部ゲリラです」って
公言してるのに何でいまさらなのか。
最近のテレヴィのロケ映像でみる
他社広告看板のボカシはともかく、通行人の顔のボカシ。
肖像権とか個人情報とかなんとからしいけど
もう少ししたら屋外での撮影なんて「取材拒否の店」のような
あの全面モザイク映像になってしまうかもしれない。
全ての撮影は白ホリで。全ての背景はCG合成で。
まんざら笑い事ではない。

通して読むのは久しぶり。
一人称で書かれたものは何度か読み直しているけれど
今回は三人称の巻の方がなぜか面白く読めた。
ネット文体を読むことに慣れすぎたせいなのかな。
70年代の薫クンのブログと
80年代の榊原玲奈とその周辺の人たちのブログ
とかなんとか。

今回はグランドギャラリー・ビルで。
あいかわらずの週末の渋谷の喧噪に舌打ちしながら
お店の扉を開ければ和やかなホームパーティのような落ち着きで
ずいぶんと人は入っているけれど外とは別世界。
ゆったりと時間が流れるなか
大西ツルさん、吾妻さんと牧さんのデュオ、TICAのライブは
あまりにも贅沢すぎ。
会員制のサロンってこんな感じだったりするのかな。
テンションも揚がりすぎてお酒を飲むペースが狂い
ずいぶん酔っぱらってしまった。
嫌なニュースも多いけれど音楽ってやっぱりスバラシィー。